2009年11月03日 千葉県野球場

前橋工業vs 千葉商大付

2009年秋の大会 第62回関東地区高校野球大会 準々決勝

平井投手(前橋工)

前橋工業日没再試合を制す、千葉商大付平部君を攻略して準決勝進出!

 前日の天候がうそのように晴れ渡った千葉県営球場。昨日の日没再試合、前橋工業千葉商大付 の1試合が絶好のコンディションの中行われた。

 両先発は前日13回をお互い投げ切った前橋工業 平井君と 千葉商大付 平部君。両者とも肩の疲労が心配され継投など監督の采配も注目された。

 試合は3回表 千葉商大付 の攻撃、2死から1番林君にピッチャー強襲の初ヒットがうまれると、続く2番大塚君もセンター前に抜けるクリーンヒットを放ち2死1.2塁と前橋工業 平井君を攻め立てこの日初のチャンスを迎えた。がしかし昨日の試合後半と同様にチャンスになかなかあと一本がでない 千葉商大付 。この日もこのチャンスを活かせず3番飯塚君がピッチャーゴロに倒れ序盤で試合の主導権を握ることはできなかった。
対する前橋工業 、3回裏相手エラーやヒットなどでノーアウト満塁の大チャンス。しかし前橋工業 のほうも 千葉商大付 平部君の投球の前にこのチャンスを活かせず前日の試合がそのまま持ち越されたかのような序盤は重い試合展開となった。

 試合が動いたのは直後の4回裏前橋工業 の攻撃、前日から続くこの重い空気を振り払うような攻撃をみせ一気に4点を 千葉商大付 平部君から奪い攻略する。スクイズで先制したあと、2番松永君に2点タイムリー2塁打が飛び出し3-0、さらに3番石原君もタイムリー3塁打を放ち4-0、試合の主導権を握った。

 6回表 千葉商大付 に1点を返されたその回、前橋工業 のエース平井君が治療のためベンチ奥にいったんさがった。誰しもが心配した前日からの連投、再び走ってマウンドに戻ってきた平井君の顔からは苦痛の表情が読み取れた。右手をさかんに気にするしぐさに、肩は勿論のこと指先・てのひらになにかしらのアクシデントが発生しただろうとする予測は容易にたった。しかしその後気迫の投球を試合終了までみせた姿は立派だった。対する 千葉商大付 のエース平部君、昨日の試合終了後、ベンチ前でキャッチボールをするその表情は苦痛に満ちており本日の試合が心配されたがこちらも試合を一人で投げ抜き、敗れはしたものの千葉県大会1位のチームエースとしてのプライドを遺憾なく発揮してくれた。

 4-1となりなんとか平井君を攻めたてたいところの 千葉商大付 。昨日のような粘りがみられたのは最終回9回表、3番飯塚君が四球で出塁してすかさず盗塁。2死3塁から6番太田君にタイムリーが飛び出し4-2の2点差、ホームランが出れば一気に同点の場面で打席に入った7番萩原君もレフト前ヒットでつなぎ2死ながら1.2塁とこの日三塁側スタンドが1番沸いた場面を迎えた。しかし打席に入った8番平部君が打ち上げた打球は無情にも内野手グラブにおさまりゲームセット。前日の13回日没再試合は4-2のスコアーで前橋工業 がものにした。

 打球が内野手のクラブにおさまった瞬間、喜びを爆発させることなく静かに空を仰いだ前橋工業 平井君。前日からの長い激闘の終わりを静かにかみしめているようでもあり、連投の疲れで一気に力が抜けていたようでもあった。平井君だけではなく前橋工業 のナインも毅然と整列し、喜びの表情が見てとれたのは挨拶後ベンチ前あたりだったのも印象的だった。また7回裏攻撃に入る前、前橋工業 ベンチから「逆転する気持ちでいこう!逆の立場でいこう!」と大きな声が響き、続いて打席に入る松永君からは「俺が出るからあとはまかせたぞ!」の大きな叫びが聞こえた。その言葉通り松永君は大きな飛球を右中間に運び、惜しくも3塁を狙ってアウトになるもののその後ベンチまで猛烈にダッシュ。ベンチ内でのそうしたムード、そしてチームを鼓舞する松永君の姿に前橋工業 の強さをみた気がした試合だった。

 一方、前日からの長い試合を敗戦という形で終えた 千葉商大付 。平井君同様この日も一人で投げ抜いたエース平部君の力投は見事だった。またアウトになった選手に対しベンチにいる選手全員で大声をあげてカウント、選手もそれにこたえるかのようにベンチに全力疾走して帰る姿は、県大会でノック時にみせていたヘッドスライディングと同様 千葉商大付 のチームカラー、元気・気迫が感じられ好感を持つに十分なチームだった。連投した平部君、グランド・ベンチそしてスタンドから声援を送ったすべての野球部員たち全員にお疲れ様と言いたい。今秋千葉県大会を制した 千葉商大付 の来春から来夏にかけての更なる健闘を祈願したい。

(文・撮影=国吉辰一) 

 

2日間に渡る激闘を制し、前橋工業のエース・平井東(2年)は思わず快晴の空を見上げた。

序盤は両チームともチャンスを作るものの、得点に繋げることができない。まるで膠着状態で終わった前日の試合を引きずるかのような流れ。
「1点取ることができれば流れは変わる」と3回に無死満塁のチャンスを逃した前橋工業の小暮直哉監督は仕掛ける機会を伺っていた。

それが4回に訪れる。1死から7番の板垣剛(1年)が右中間を破る三塁打。続く8番沼尾大地(2年)に小暮監督は「迷いはなかった」とスクイズのサインを出す。「来る」と思っていた沼尾に心の準備はできていた。
初球、スクイズを察した千葉商大付バッテリーは高めにウエストするが、それに飛びついた沼尾の打球はフェアゾーンに転がった。欲しかった欲しかった1点がついに入った。「(小暮監督に代わった)県大会の後からずっとスクイズの練習をしてきていた。練習通りです」と沼尾は笑顔。
小暮監督の読み通りこの1点で流れが変わり、その後は4連打で3点を追加した。

一方、「昨日より調子が良かった」と話していたエース平井にアクシデントが襲う。試合前から気になっていた右人差し指のマメがついに潰れた。皮が剥け、出血した状態に捕手の沼尾が初めて気づいたのが1点を返された6回。「東(平井)が指を気にする仕草を見せたのであれっ(?)ていう感じでした」と沼尾は話す。

 治療で一時試合が中断したが、「絶対に交代する気はなかった」とエースは気丈にマウンドに戻った。
 以降は負担の少ない直球主体のピッチング。「指は痛かったけど気持ちで投げました」とエースが話せば、「直球の球威は変わらなかった」と沼尾も驚くピッチングで、4回に挙げた4点を守り抜いた。

 「勝ったろ喜びより、指が気になってやっと終わったという感じでした」と空を見上げたことを振り返った平井。北関東唯一のベスト4進出で選抜出場が確実になった。「まだ実感はない。甲子園で全国レベルのチームを相手にするなら、もっと直球を速くしないと」とエースは笑ったが、試合を重ねるごとに強くなるチームを誇らしげに感じているようだった。

(文=松倉雄太

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